自由の人      [戻る]

'95.8.25.発売

1. 12:15 P.M. -At Bryant Park-
2. もっとそばに
3. So long
4. It's only love
5. 週末の天使
6. Sunny afternoon
7. Evil eyes -悪意-
8. もう一度愛せたら
9. Party's up!
10. 2 o'clock samba
11. I think,you think
12. 飛翔 -Fly away-

全作詞、作曲、編曲:三谷泰弘

参加ミュージシャン
三谷泰弘:All Vocals,All Keyboards,Computer Programming
夏秋冬春:Drums
飯塚昌明:Electric &Acoustic Guitar
山本公樹:Saxophones

■esqの記念すべきデビュー・アルバム。
'84年、スタレビ在籍時に作曲、いつか発表するソロ・アルバムのためにと、10年間秘蔵していた2曲「もっとそばに」「2 o'clolck samba」を含む、三谷念願のソロ活動第一弾。
ジャケットはNY,マンハッタン、Bryant Parkでの撮影。同じBryant Park で録音した雑踏の音からアルバムはスタートする。
デビュー・シングル「週末の天使」のプロモーションビデオもNew York にて撮影(ファンクラブ限定作品「Triplet」にて見ることができる)。
M1,M6,M11の3曲のアカペラを含む、バリエーション豊かなデビュー作。初回の紙製デジパック仕様のジャケットと、通常のプラケース・ジャケットの2種類がある。

全曲解説

esq "自由の人"

複雑に絡み合った現代社会の中で「自由」であるということはどういう事なのか?。個人がそれぞれの役割、責任を果たしつつ、社会の中で独立した存在であり続けることの重要性、その意味をメインコンセプトに掲げた、esqのデビュー・アルバム、"自由の人" 。
多彩な音楽性をもちながら、一貫して高いクオリティを保ち、ポップ・ミュージックが本来持っている楽しさ、美しさ、暖かさ、そして無理のない自然な同時代性を目指しました。
3人の優秀なミュージシャン(夏秋冬春/ドラム、飯塚昌明/ギター、山本公樹/サックス)、優れたエンジニアリング(原口宏)の協力を得て、プリプロからトラックダウンまで完全に自宅スタジオで制作した本作。時間を気にすることなく、妥協を排し、納得いくまで音楽的内容を追及したこの作品は、新たなミュージシャン/プロデュースのあり方を提示するという意味でも、画期的な内容のアルバムになっていると思います。

M-1...12:15P.M. -At Bryant Park-
アルバムのオープニングは、ジャケットを飾るManhattanのBryant Parkで収録したSEからスタートします。そして撮影時に感じたやわらかなイメージを、ひとりで多重録音したアカペラで表現してみました。

M-2...もっとそばに
このアルバムの収録曲のうちもっとも古い、およそ10年前に書いた2曲のうちの1曲です。スターダスト・レビュー在籍時からの音楽仲間である山本公樹のソプラノ・サックスをフューチャー、間奏には夏秋冬春のスピード感溢れるドラムが冴えています。アルバムタイトルである"自由の人"、そのコンセプトの一面を支えている楽曲になっていると思います。

M-3...So long
イギリスっぽい解釈によるジャジーなアプローチのサウンドを目指して書いた曲です。夏秋冬春のタイトなドラミング、飯塚昌明によるシャープなギター・カッティングもとてもいい雰囲気を出しています。詞はやさしさを残したままの別離、というテーマ。

M-4...It's only love
元々はスローだった楽曲を、アップ・テンポにアレンジし直した曲。恋愛絶頂時の、世界のすべてが素敵に見える時期を歌った、ハッピーなラブソング。今回のアルバムの中では、スターダスト・レビュー時代のサウンド・プロダクションにもっとも近いと思われる曲です。

M-5...週末の天使
先行発売される、esqのデビュー・シングル。セントラル・パークで撮影されたプロモーション・ビデオも完成度の高いものになりました。飯塚昌明の素晴らしいギター・ソロも聞き物。

M-6...Sunny afternoon
2曲目のアカペラはドゥーワップ・スタイルのものです。晴れ上がった午後の心地よさを歌っています。

M-7...Evil eyes −悪意−
覗き趣味中心のメディア。そしてそれを容認し、エスカレートさせる大衆の欲求について歌っています。それぞれの心の中にある悪意が、どれだけ人を傷つけるか、その危険さを感じてもらえればと思います。パーカッションがふんだんに入った、アップ・テンポのフェイク・ラテンっぽいサウンド。

M-8...もう一度愛せたら
ジャジーなムード溢れるスローバラード。この歌はほとんどテイクワンで録音でき、ヴォーカリストとして自信を深めた1曲。山本公樹の渋いテナー・サックス・ソロ、夏秋冬春の、雰囲気あるブラシによるドラミングも聞き物。

M-9...Party's Up!
無目的で無責任な人の集まり、そうした状況での集団心理、部外者を排斥するみにくさについて歌っています。間奏、ビッグ・バンド・スタイルの、山本公樹のひとり多重録音によるサックス・セクションが見事に決っています。

M-10...2 o'clock samba
10年前にかかれた、もう1曲がこの曲です。まさにこのソロ・アルバムのために、10年間暖めてきたといってもいい、数多い自作曲の中でも特に気に入っている作品です。ボサノバやサンバのノン・ヴィブラート・ヴォーカルの雰囲気を目指してみました。

M-11...I think,you think
3曲目のアカペラはちょっとジャジーなアレンジで、シニカルな内容を歌っています。

M-12...飛翔 -Fly away-
'95年年頭に亡くなられた、スターダスト・レビューのツアーで照明を担当していた小林泰氏に捧げる曲。最期まであくまで強く戦った彼の姿、そして死というものに対する僕のイメージを表現しました。夏秋冬春が吹くオーストラリアの民俗楽器、ディジュリドゥーもアクセントになっています。

音楽をスタートし、プロ・ミュージシャンを目指しはじめた14歳の頃からずっと夢見てきたソロ・アルバム。それがこのようにベストの形で、完全なるセルフ・プロデュースで完成出来たことをとてもうれしく思っています。このアルバムを聴く事をもっとも心待ちにしてきたのは、誰よりも僕自身なのです。

esq 三谷泰弘

ジャンボリー      [戻る]

'96.9.15.発売

1. Welcome to a JAMBOREE 
2. Ride on a bus 
3. Space-age love affair 
4. 抱きしめよう 
5. 逃亡 -Running out- 
6. Make love 
7. Happy Together 
8. 再会 
9. This is love 
10. 雨の中のオレンジ 
11. 悲しみにByebye 

全作詞、作曲、編曲:三谷泰弘 (ただしM7...Garry Bonner/Alan Lee Gordon)

参加ミュージシャン
三谷泰弘:All Vocals,All Keyboards,Computer Programming
夏秋冬春:Drums,Didgeridoo,Short Wave Radio
BARA(榊原雄一):Bass,Fletless Bass
飯塚昌明:Electric And Acoustic Guitar
山本公樹:Saxophones
山口とも:Percussions

スペシャル・ゲスト
武川"クジラ"雅寛:Violin
徳武"Dr.K"弘文:Electric Guitar

■デビューから1年後に発売された2nd アルバム。
ジャケット通り、全体が非常に明るいイメージの作品で、スタレビ時代の三谷を彷彿させる。
M1 のアカペラでスタート。徳武"Dr.K."弘文氏の素晴らしいギターソロが聞き物の「Ride on a bus」、3rd シングルとなった「抱きしめよう」では、Moonriders の武川"クジラ"雅寛氏のバイオリンもフューチャー。
M7 のアカペラ「Happy Together」はThe Turtlesの'69年のヒット曲のカバー。
M10 の「悲しみにByebye」では、アルバム録音時期に行われた、赤坂BLITZでのesq のライブ時に収録した、なんと約1000人のバック・コーラスがフューチャーされている。
初回のピクチャーCD仕様と、通常の裏表紙(バックインレイ)のあるジャケットの2種類がある。

全曲解説

ジャンボリー
jam・bo・ree
  |名| 1 陽気な騒ぎ[会合, 宴会]. 2a (政党・競技連盟などのお祭り騒ぎの)余興付き大会. b ジャンボリー《特に, 全国的・国際的なボーイスカウトの大会; cf. camporee》. (研究社 電子ブック版新英和中辞典より転載)

何か楽しいことがおこりそうな予感
人々が集まること、素敵な出逢いの前触れ
Communicateする喜び、語り合える幸せ

Welcome to a JAMBOREE!
Let's ride on a "esq Bus" together!

'60年代末期から'70年代初頭にかけて、ぼくはまだ子どもでした。でもあの頃の、人々が集い、コミュニケーションしようとする強い意思を持った時代の空気を、ぼくは今でも忘れることができません。
そして四半世紀を経た今、また人々が集まろうとしている気配を感じます。きっと、どこかまだ行ったこともないような場所を探しに。
「ジャンボリー」、これがesqの2ndアルバムのテーマです。

1.Welcome to a JAMBOREE (A Cappella)
オープニングは1stアルバム「自由の人」と同じく、アカペラでスタートします。口でやっているパーカッションがなかなか良い感じ。アルバムタイトルである"ジャンボリー"のイメージをストレートに楽曲化してみました。

2.Ride on a bus
今回のアルバムでの軸になる曲。この曲ができたときに、アルバムの全体像が見えてきて、とてもHappyな感じのアルバムをつくれそう、という予感がしていました。夏秋冬春・ドラムとBARA(榊原雄一)・ベースによるステディなリズムセクション、そしてなによりも徳武"Dr.K"弘文氏の最高に"いかした"ギターソロが聞き物。実は曲作りのときから徳武氏のギターをずっと思い描いていたのです。

3.Space-age love affair
スターダスト・レビュー時代の"Supersonic"以来久々の宇宙もの。中間部で聴かれるesq Big Band(ドラム・夏秋、ベース・BARA、ギター・飯塚、サックス・山本)のゴージャスな4ビートが渋く決まっています。そして夏秋冬春の短波ラジオのチューニング音がとっても不思議な雰囲気を出しています。

4.抱きしめよう
アルバムに先行して、'96.5.25.に発表されたesqの3枚目のシングルでもあります。シングルとは違う、アルバム用のミックスです。ムーンライダーズの武川"クジラ"雅寛氏の、何とも人間味あふれるヴァイオリンソロ、そして飯塚昌明のギターと掛け合うエンディングが魅力的。Introで聴かれる不思議にうねる音色は、夏秋冬春の奏でるオーストラリアの民族楽器、ディジュリドゥーです。

5.逃亡 -Running out-
esqのアルバムには、こうしたネガティブな感情を歌った歌を1曲は入れていきたいと思っています。夏秋冬春の、歌に呼応するような、的確でシャープなハイハットが全体を引き締めています。山本公樹のアグレッシブなサックスソロも素晴らしく、そしてなにより、エンジニア原口宏による非常に鋭角的なミックスがこの曲を魅力的に仕上げてくれました。

6.Make love
まさしく"Make love"の歌。山口とものパーカッションが素晴らしく繊細に、曲を引き立てています。飯塚昌明のガットギターとエレクトリックギターのコンビネーションも最高にリラックスした雰囲気を醸し出しています。

7.Happy Together (A Cappella)
今回のアルバムの全体の世界観を象徴している曲でありタイトルだと感じていたので、アカペラによるカバーで収録しました。"Happy"も "Together"もどちらも正に今、最も必要な感情だと思っています。元々The Turtlesがオリジナルですが、このバージョンは確か男女混合のコーラスグループがカバーしたバージョンがイメージのもとになっています。しかし、 '72、3年頃ラジオで聴いていただけなので、そのバージョンが何というアーティストによるものだったか実は知りません。どなたかご存じの方、esq三谷までご一報を。

8.再会
esqの4枚目のシングルとして8/25に先行発表されます。以前恋人同士だったふたりの再会にまつわる歌ですが、実は恋愛だけに限らず、広い意味で「時と共に失ってしまったもの、時代が移り変わるたびに誰しもが感じる喪失感」について歌ったつもりです。この曲がもし、聴いてくれた人達の心の中に残るとしたら、そのテーマの普遍性からかも知れません。

9.This is love
'85年に書いたとても古い曲。とてもシンプルな歌詞ですが、本当に恋愛の真っ最中だとこんな歌詞でもリアリティがあったりするものです。山口とものウォームでファンキーなコンガ、そして飯塚昌明のレスポールによる素晴らしいギターソロが聞き物。ほぼノン・エコーのVocalも自慢できる出来栄えだと思っています。

10.雨の中のオレンジ
元々はわりとシンプルなバラードだったのですが、ドラム、ギター、フレットレスベース、サックスと生楽器が加わる度にどんどん世界が広がっていき、非常に緻密で迫力のあるアレンジとなりました。現在のesqレコーディングメンバーの充実振りを如実に表している楽曲になったと思います。

11.悲しみにByebye
今、ぼくが聴き手の皆さんに最も伝えたいメッセージがこの曲のテーマかも知れません。'96.5.25に行われた赤坂BLITZでのesqのライブで、ちょうど制作中だったこの曲のコーラスを1000人のお客さんに歌ってもらい、今回のアルバムに参加してもらいました。エンディングは元々フェイドアウトの予定だったのですが、夏秋冬春・ドラム、BARA・ベースの演奏があまりにエキサイティングだったため、途中で絞るのは忍びなく、エンディングまで生かす事になったといういわくつきの曲でもあります。

esqの2ndアルバムであるこの「ジャンボリー」、ぼくがつくりたいと思っていた音楽の世界を、1stアルバムである「自由の人」よりもかなり広範囲な形で表現できたように思います。そして歌詞の面でも、ぼく自身の世代意識を含めた世界観をかなり明確に表現できました。
音楽アーティストとしてのあり方、その姿勢も含めた、新しい可能性を追及しているesqの世界に、ぜひあなたもご参加ください。

esq 三谷泰弘

Episode Vol.1     [戻る]

'97.2.26.発売

1. Moon River
2. Stop,Look.Listen
3. きっと言える
4. 再会
5. For Once In My Life
6. きぬずれ
7. Caroline,No
8. Single Night

■esq の3rd アルバムは、コンサート・ホールで一発録りで録音された、ピアノ弾き語りのカバー・アルバム。
三谷がパーソナリティを務めるラジオ番組で行ってきた、リスナーのリクエスト曲を弾き語りするコーナー「Piano Bar のコーナー」を音源化したような作品。
ヘンリー・マンシーニ、ユーミン、スタイリスティックス、スティービー・ワンダー、山下達郎、ビーチ・ボーイズ、スターダスト・レビュー、と一見統一感のないような選曲だが、見事にesq ワールドに変化しているところが聴き所。
CD エクストラ仕様で、ピアノ弾き語りMIDIデータ、アカペラでのサウンドファイル、esq Movieなどを収録。

全曲解説

Episode Vol.1 / esq

ep・i・sode
ギリシャ語「間に挿入されるもの」の意から
名 1.a (小説・劇などの中の)挿話(ソウワ). b (連続物の放送番組・小説などの)一編, 一回分(の話): last week's 〜先週の分[放送]. 2 挿話的な出来事, エピソード. (研究社 電子ブック版新英和中辞典より転載)

esq、三谷泰弘のアコースティック・ピアノ弾き語りによる、初のカバーアルバム"Episode Vol.1"。

通常のオリジナルアルバムがいわば、連続性のある各章から成り立っている小説だとしたら、今回のアルバムは短編を中心に編まれた、いわば間にはさまれる挿話(エピソード)のような作品集です。

ソロになってからラジオ番組やライブなどで、聴いてくださる皆さんからのリクエストを受けて、いろいろな曲を歌うようになりました。自分だけでは思いつかない選曲を授かることで、思わぬ広がりを感じています。
いわば、聴いてくださる皆さんから投げかけられたボールを、自分の中でひとつひとつ消化しながら打ち返していくような、そんなおもしろいゲームをやっている感覚が少しづつ芽生えてきたのです。

今回は500人ほどのキャパシティのホール(埼玉、エローラホール)のステージ・センターにピアノをおき、3日間、自分でテープレコーダーのRecボタンを押しながら、たった一人で弾き語りのレコーディングを行いました。歌もアコースティック・ピアノもいっぺんに録音してしまう、いってみれば"お客さんのいないライブ・レコーディング"。
ライブアルバムがそうであるように、細部の完成度を目指すより、より"伝えようとする力の強さ"をもった歌が録れたテイクを採用していきました。
こうして録音した13曲の中から、よりすぐりの8曲を選び、若干の楽器、コーラスのダビングを施して完成したのが、この"Episode Vol.1"です。

ふだんのアルバム作りが、作詞作曲、アレンジという長い構想の時間を経て、一つ一つの演奏や歌を積み上げるようにつくっていく、いわば時差のある中で完成度を高めていくレコーディングだとしたら、今回は一発録りという同時性の中で、歌うこと、演奏すること、そのものの肉体性とその成果を確かめてみたい、という思いがありました。


Moon River
'61年の映画「ティファニーで朝食を」の主題歌。ヘンリー・マンシーニがオードリー・ヘップバーンのために、ほぼ1オクターブの中におさまるように書かれたメロディがなにより素晴らしい。
--Cello by 四家卯大

Stop,Look,Listen
ザ・スタイリスティックスの'71年のヒット曲。ヒットチャート好きのまじめな中学生だったぼくは、当時の不良少年たちの最新流行だったフィラデルフィア・ソウルを、レコードを貸し借りしながら一緒に聴いていました。
--Alto Saxophone by 山本公樹

きっと言える
荒井由美 '73年のヒット曲。ユーミンの曲っていつの間にか心に残っているのがなんともスタンダード。
--Percussions by 山口とも

再会
esqの4枚目のシングルであり、'96年のセカンド・アルバム「ジャンボリー」に収録。発表前にライブで初めて歌ったこのヴァージョンが好き、という皆さんの声にお答えして。

For Once In My Life
スティービー・ワンダー '69年のヒット曲。ジェームス・ジェマーソンの偉大なベースラインに敬意を表して。
--'61 Fender Jazz Bass by BARA(榊原雄一)
--Percussions (Includes "木下") by 山口とも

きぬずれ
'77年の山下達郎のアルバム「Spacy」より。このアルバムのB面の流れ(当時はアナログ盤なので)はとっても渋くて、どの曲も好きでした。

Caroline,No
'66年のビーチ・ボーイズの「Pet Sounds」から。ブライアンのソロよりも、ニック・デ・カロのヴァージョンに近い雰囲気で歌ってみました。

Single Night
'85年のスターダスト・レビューのシングル。この曲も、皆さんからのリクエストが多いので歌ってみました。
--Cymbals by 夏秋冬春

このアルバムが、皆さんのゆったりした時間のお供になれば幸いです。
esq 三谷泰弘

One And Only     [戻る]

'97.8.25.発売

1. Meldy 
2. 恋人・じゃ・ない 
3. あいを しんじて 
4. One and only 
5. 砂の上のBlues 
6. Hello again 
7. Up,Up And Away 
8. 微笑みとダンス 
9. 彼女はメイド・イン・ヘブン 
10. ここに

全作詞、作曲、編曲:三谷泰弘 (ただしM7...Jimmy Web/M9...作詞:平出よしかず 作曲:三谷泰弘)

参加ミュージシャン
三谷泰弘:All Vocals,All Keyboards,Computer Programming
夏秋冬春:Drums,Accordion
BARA(榊原雄一):Bass,Fletless Bass
飯塚昌明:Electric And Acoustic Guitar
山本公樹:Saxophones
山口とも:Percussions

スペシャル・ゲスト
角田順:Electric Slide Guitar & Acoustic Guitar
田村玄一:Pedal Steel

■esq の4th アルバム。ポップ・ミュージックへのこよなき愛情を歌った「Melody」からスタート。
'80年代風サウンドにのせた一風変わったラブ・ソング「恋人・じゃ・ない」、5th シングルの、モータウン・ビートの軽快な「あいをしんじて」、シャープな4ビートがさえるジャズ・ロック「砂の上のBlues」、フィフス・ディメンションのアカペラでのカバー「Up,Up And Away」、スタレビ時代の三谷曲「彼女はメイド・イン・ヘブン」のセルフ・カバーなど、すっかり確立したesq 流ポップ・ミュージックが展開される。
'60のスペース感覚溢れるジャケットも話題に。

全曲解説

one and only
[only の強調形として] (1) [one's one and 〜] 唯一無二の (2)[歌手・役者などを紹介する際に用いて]最高の
(研究社 電子ブック版新英和中辞典より転載)

大切な人
変わることのできない存在
大事なもの
そんな、あなたのために

ぼくたちが子供の頃、"忙しい"というのはほんの一握りの限られた人のための言葉でした。でも気がつくといつの間にか、この世の中のすべての人が忙しい、そんな時代になってしまいました。
目まぐるしく動き続ける時代のなかで、社会の中の一人一人、それぞれの個人の尊厳が少しずつすり減っているような気がしています。
そう、この世に生まれてきた人は、どんな人だって"One And Only"な存在です。だからこそ、自分が自分を大切にするように、ひとを大切に思いたい。
"One And Only"、これがesqの4枚目のアルバムのテーマです。

1.Melody
'97年2月にリリースしたカバー・アルバム、"Episode Vol.1"。この作品がぼくに、音楽をやることの意味を改めて教えてくれました。そんな、自分に影響を与えてくれた、たくさんのポップ・ミュージックへの感謝の気持ちをこめて書いた曲です。山口ともの弾むようなパーカッション、角田順氏のファンキーなスライド・ギターをフューチャー。シャープな原口宏のミックスがこの曲をより立体的にしています。

2.恋人・じゃ・ない
うまくいく恋だったり、悲しい恋じゃなくても恋の歌は作れるんじゃないか、とずっと思っていました。久々の80年代風サウンドにのせて、そんなちょっと変わった恋の関係を歌っています。夏秋冬春によるタイトなドラミングと、飯塚昌明の"ゴージャスな"ギター・ソロがあの時代を感じさせてくれるでしょう。

3.あいを しんじて
サウンドと、メロディと、言葉、その3つがほとんど同時にでき上がった曲。こんな曲が今の時代に街に流れていたら、とってもほっとするんじゃないかと思ってesqの5枚目のシングルにしました。黄金のモータウン・リズムを生まれて初めて使った曲でもあります。

4.One and only
アルバムのタイトル・ナンバー。1曲の中に、とても多くの想いを、そして大きな世界を歌うことができて、自分でも気に入っています。BARA(榊原雄一)による大きな波を感じさせるベース、山本公樹の、歌の感情をより高めてくれるサックスがこの曲をより素晴らしいものにしてくれました。

5.砂の上のBlues
esqのリズム・セクション(ドラム・夏秋、ベース・BARA、ギター・飯塚、サックス・山本)の素晴らしさが見事に発揮された曲。デモの段階の、'60 年代後期のフェイクっぽい雰囲気が、シャープで現代的なジャズ・ロックに変身しました。山本公樹アレンジによる、一人サックス・セクションが見事に決まっています。

6.Hello again
気のおけない旧友との再会というテーマ、そしてどことなく懐かしいサウンド。この曲は特にぼくと同世代の人たちに、共感を持って受け入れられるような気がします。角田順氏のアコースティック・ギターに加え、田村玄一氏の穏やかながらフリーキーなペダル・スティールが見事な世界観を与えてくれました。

7.Up,Up And Away (A Cappella)
今回のアカペラによるカバーは、The 5th Dimensionの'67年の大ヒット・ナンバー。ぼくが生まれて2枚目に買ったシングル盤でもあります。近年再評価が高まっているジム・ウェッブの、斬新なメロディと見事なコード・チェンジをアカペラにしてみました。

8.微笑みとダンス
'94年にパリに旅行した時に夢の中でできた曲。ふと気がついたら寝ながらサビのメロディを歌っていて、思わずホテルのベッドから飛び起きて譜面に書き残したことを思い出します。繊細な山口とものパーカッションが曲のムードをいっそう高めてくれています。

9.彼女はメイド・イン・ヘブン
'89年のスターダスト・レビューのシングル『Lonely Snow Bird』のカップリングに収録されていた曲。今年のライブで取り上げてからというもの、この曲がぼくにリメイクを訴えかけているような気がしていました。

10.ここに
全曲が書き終わった後、どうしてもアルバムに何かが足りないと感じて、最後に書いた曲です。参加ミュージシャンの間で一番人気の曲でもあります。飯塚昌明によるギターの多重録音が、不協和音も交えながらスケールの大きさをこの曲に与えてくれました。

1st『自由の人』、2nd『ジャンボリー』、そしてカバー・アルバム『Episode Vol.1』と順調にリリースしてきて、このesqの4枚目のアルバム『One And Only』は、また一歩大きく前進できたように思います。まだまだこれからもたくさんの人たちにもっと多くの事を伝えていきたいと思っています。ぜひ皆さんもこのesqの世界にご参加下さい。
esq 三谷泰弘

Gems ~'95 to '98~     [戻る]

'98.10.1.発売

1. Gems 1 
2. Love goes on 
3. あいを しんじて 
4. 週末の天使 
5. もっとそばに 
6. 再会(From "Episode Vol.1") 
7. Ride on a bus 
8. 抱きしめよう 
9. 飛翔 -Fly away- 
10. Happy Together
11. 2 o'clock samba
12. This is love
13. One and only
14. 卒業写真
15. Gems 2
16. Melody 

全作詞、作曲、編曲:三谷泰弘 (ただしM10...Garry Bonner/Alan Lee Gordon/M14...作詞、作曲:荒井由実)

全曲解説

1. Gems 1
このアルバムのためにレコーディングしたアカペラの新曲。全部で28トラックぐらいを重ねてひとりで録音した、歌詞のないアカペラです。

2. Love goes on
シングル『週末の天使』のカップリングで、アルバム未収録曲。スタレビでの最後のアルバム「楽団」録音時に1回録音していたのですが、未発表に終わってしまい、ソロになって新たにレコーディングし直しました。『自由の人』のアルバム・コンセプトにうまくはまらない気がしたのと、アルバム全体の曲調のバランスから見て、あえてシングルのカップリングのみのリリースにしたのですが、リリース直後からファンの皆さんの間では人気が高く、ライブでも非常に盛り上がる1曲となってきたので、今回アルバム初登場となりました。

3. あいを しんじて
5枚目のシングルであり、『One And Only』にも収録のこの曲は、明るくポップな雰囲気と共に、歌詞にも人気があります。最近は悲惨な事故や事件が多くて、気持ちが暗くなることも多いのですが、そんなときにも決して明るさを忘れないように、という思いをこめて作りました。モータウンビートといわれるこのリズムは、非常に魅力的なリズム・パターンで、一時期(特に日本では)多用されましたが、あまりにお手軽にみんなが使うので、アレンジャーとしては簡単には使わないぞ、と心に決めていました。ただこの曲ができたときには、このビートがとても自然にはまってしまったので、スタレビ時代を含めても生まれてはじめてのモータウンビートを使ってのアレンジとなりました。

4. 週末の天使
記念すべきデビュー・シングルであり、『自由の人』収録曲。実は'89年に書いていた曲で、当時は未発表で終わっていましたが、とても好きな曲だったので、この曲をソロとしてのデビュー曲にできたことは誇りでもあります。飯塚昌明のオーバー・ベンド気味のギター・ソロがとても素晴らしく、この曲をより高い次元に引き上げてくれました。『自由の人』のジャケットと共にNew Yorkで撮ったプロモーション・ビデオ(アルバム・ジャケット等、esqのすべてのビジュアルを担当してくださる向圭一郎氏作)ができてからは、この曲を聴くとその映像を思い浮かべずにはいられなくなりました(esqの現時点までのビデオクリップはほぼ、『Triplet』に収録されています)。

5. もっとそばに
『自由の人』収録のこの曲は、アルバムリリース後リカットという形で2nd シングルにもなりました。もともと'84年に初めてソロになることを真剣に考えたときに作った曲で、その時にデモ・テープも録音しました(デモ・バージョンは『Triplet』に収録)。それからずっと、バンドでのアルバム選曲会議にも出さず、いつかきっと作れるだろう我がソロ・アルバムのために秘かにとっておいた、大切な曲です。1stアルバムに参加したメンバーの音もどれも素晴らしく、どの一音、どの一言もぼくにとっては大切なものです。この曲は『自由の人』というアルバム・コンセプトを象徴する曲であり、自分自身の人生に対するテーマでもあるのです。

6. 再会(From "Episode Vol.1")
オリジナルは2nd アルバム『ジャンボリー』に収録された曲で、esq の4枚目のシングルでもあります。ここではカバー・アルバム『Episode Vol.1』に収録したピアノ弾き語りのバージョンを収録しました。この『Episode Vol.1』ではレコーディングにBoesendorfer Pianoを使用したのですが、このピアノは普通のピアノと違い、低音部が1オクターブ多く作られています。この曲の一番最後の音、Gの最低音も普通のピアノでは演奏できない音域だったりします。弾きはじめた当初はこんな低い音域なんて使うかな? と思っていたのですが、その低域がとても気持ちよくて、結果的にこのアルバムでは多用してしまいました。

7. Ride on a bus
『ジャンボリー』収録曲。こういったシャッフルビートの曲は洋楽では何曲か見かけるのですが、日本の音楽ではあまり使われていません。というのも作るのが難しいからなのですが、この曲はとてもうまくできて、自慢の作品でもあります。自宅で曲を作っていたときから、徳武さんのギター・ソロを頭に描いていて、以前からの知り合いである夏秋くんに紹介してもらいました。徳武さんの自宅スタジオに録音機材を持ち込み、お邪魔虫レコーディングしてきたのですが、とにかく徳武さんはギターも最高なら、人柄も素晴らしくて、素晴らしい録音&思い出となりました。ソロが入る前のコーラスは、徳武さんに敬意を表して、 "Play it,Dr.K!"とハモっています。

8. 抱きしめよう
esqの3rd シングルであり、『ジャンボリー』にも収録しています。ここではアルバムバージョンのミックスを収録しています(シングルとはミックスが違います)。これもMoonridersの武川 "クジラ" 雅寛さんのお宅に夏秋くんとお邪魔して、バイオリンを弾いていただきました。クジラさんに、お宅のキッチンで演奏していただき、ぼくらは広々とした居間で録音するという、不思議な自宅録音で、今考えると逆の方が良かったように思うのですが、とにかくここで聴けるバイオリン・サウンドはまぎれもなく、クジラ 's Home Kitchenサウンドです。途中で卵売りのおばさんが玄関に入ってきたり、外を走るバイクの音で録音を中断したり、とても楽しい一日を過ごせました。

9. 飛翔 -Fly away-
ぼくが'95年にスタレビを脱退したのとほぼ同時に、それまで長い間、ツアーを共にまわり、素晴らしいライティングを作り続けてきてくれた小林泰さんが亡くなられました。そのあまりに早すぎる悲しい死に、自分の中で何か作品を作らずには昇華できなくて、ちょうど制作中の『自由の人』に向けて作った曲です。また、'91年に父が亡くなったときに感じた気持ち、人が亡くなっても決してその人の魂は消えてなくなるわけではなく、遥か先に向かって飛び立って行くような思いも、この曲にはこめられています。山本公樹の透明で繊細なソプラノ・サックス、夏秋冬春の吹くエンディングのディジュリドゥーがこの曲の世界にさらに深みを与えてくれています。

10. Happy Together
『ジャンボリー』収録のこの曲は、オリジナルはThe Turtlesの'69年のヒット曲ですが、以前からとても好きだったのでアカペラでカバーしました。タートルズのオリジナルよりも、男女混声のコーラス・グループがやっていたバージョンの印象が強く、記憶の中に残っているその雰囲気を思い出しつつ、何とか自分で再現しようと思ってアレンジしました。 '70年代初頭に確か文化放送でオン・エアされていた、愛川欽也&落合恵子の同名タイトルの番組のオープニングでかかっていたはずなのですが、今だにそれが誰のバージョンかわからないのです。

11. 2 o'clock samba
「もっとそばに」と同じく、'84年に書き、デモテープを録った曲が10年の月日を経て『自由の人』の中で発表することができました。自分の曲はどれも可愛いものですが、この曲は特に大好きで、メロディも歌詞もサウンドもぼくというアーティストの特徴を良く表していると思います。ドラムスのキックに聞こえるのは夏秋くんがタンバリンをマレットで叩いている音です。エンディングに向けて、徐々に聞こえてくる様々なパーカッションの音は、夏秋宅にあるさまざまなものを二人で鳴らしているもので、ギロのように聞こえるのは古い電気スタンドのギザギザした首の部分だったりします。

12. This is love
『ジャンボリー』収録曲。ぼくがこの2nd アルバムの中で一番、演奏として好きな曲です。特にこのセッションが初対面の山口とものコンガがなんとも最高で、これは彼の演奏のTake 1(初めて曲を聴いて、演奏したテイク)を採用しています。彼の楽しい雰囲気や優しい人間性が素直に表れたプレイで、聴いていて気持ちが明るくなります。曲自体は'85年ぐらいの作品なのですが、まさしくそのとき恋の真っ最中で、実は恋人に捧げた曲だったりします(照)。

13. One and only
『One And Only』のタイトル曲。もうすぐ21世紀になろうとしている現代は、ぼくらが子どもの頃に夢想していた世界と大きく違っていて、夢が溢れる美しい未来でもなく、それどころか、普通にそれぞれのペースで静かに生きていくことすら困難な時代になってしまったような気がします。そんな今の時代に、個人の尊厳を大切にして、等身大に生きることをちゃんと見据えていきたい、という思いをもってこの曲を書きました。こういうテーマで曲が書けたことを自分で誇りに思っていますし、ずっと歌いついでいきたいと思っています。山本公樹のサックスとBARAのベースがこの曲をより大きな世界にスケール・アップしてくれました。

14. 卒業写真
『Episode Vol.1』の録音は、弾き語りということもあり、二日半で13曲をレコーディングしました(実際にアルバムに収録したのは8曲)。ユーミンの曲はぜひ収録したいと思っていたのですが、アルバム全体がバラード中心の選曲になったので、バランスを考えて、テンポのある「きっと言える」を収録し、同時に録音したこの曲はミックスまでしたものの、最終段階ではずしました。でも出来自体には自信があったので、今回初収録となりました。なお、他に「Never Gonna Fall In Love Again」(Eric Carmenのカバー)、「飛翔 -Fly away -」の『Episode Vol.1』の時のテイクが、シングルのカップリングとしてリリースされています(つまり、あと2曲で、全13曲になるということです。さてあと2曲とは?)。
どんな人にも思い当たる、青春時代の切ない気持ちを見事に描いた、まさにスタンダードと言うべき名曲で、歌うたびにその意味の深さに感心してしまいます。昔は単なる学生時代の恋人を思い返す歌だと思っていたのですが、歳を重ねるたびに、まっすぐで恐れを知らない、学生時代の自分自身を振り返っているように思えるようになり、更にこの曲が好きになりました。

15. Gems 2
このアルバムのためにレコーディングしたアカペラの新曲。全部で28トラックぐらいを重ねて録音した、歌詞のないアカペラです。

16. Melody
アルバム『One And Only』より。自分が愛する音楽に対する気持ち、そしてぼくが音楽をやっている意味、聴いてくださる皆さんに一番伝えたい気持ちを歌にしました。そしてこれからも、こういう気持ちを忘れずに音楽を続けていこうという新たな決意を表す意味で、このアルバムのエンディングに収録しました。
この『Gems ~'95 to '98~』でesq の第1幕は終了です。これから次なるステップに向けて進んで行こうと思います。もしあなたが今後も、ぼくの作り出すハーモニーに参加していただけるのであれば、ぼくはとっても幸せです。Let's join the harmony!
'98年10月

esq 三谷泰弘

Tailor-made     [戻る]

2000.1.20.発売

1. Awakening (Instrumental)
2. Going my way
3. "I love you" song
4. 黄金の日々
5. R.E.A.L.
6. Perfect timing
7. Butterfly
8. 微睡み -Dream land-
9. Georgy Girl (A Capella)
10. Cry
11. 流星物語

全作詞、作曲、編曲:三谷泰弘(M9...Jim Dale/Tom Springfield/M11...作詞:根本要、林紀勝、作曲:三谷泰弘)

つるし
流行の音楽もいい
でも、ぴったり来るのはテーラー仕立ての音

Tailor-made 【形】
1. 注文仕立ての; (特に)〈婦人服が〉テーラー仕立ての, テーラー型の. 2. よく合った, ぴったりした.
(研究社 新英和中辞典 CD-ROM版より)

買ってまもないお気に入りのジャケットの
ボタンが突然ポロッと取れてしまう
父のお下がりのあのジャケットのボタンは
これ以上ないほどしっかり縫いつけられ
今だに仕立てられた時と同じまま

Tailor-made songs そんな歌を今あなたに

参加ミュージシャン
三谷泰弘:All Vocals,All Keyboards,Computer Programming
夏秋冬春:Drums
BARA(榊原雄一):Bass
飯塚昌明:Electric Guitar
山本公樹:Saxophones
山口とも:Percussions

山下政人:Drums on "Perfect timing"
池田達也:Upright bass on "Perfect timing"

全曲解説

1.Awakening (Instrumental)
目覚めから眠りまで、現代に生きる人たちが日々生活する中で、様々に感じる喜びや悲しみ、苦しみや美しさ、などを1枚のアルバムにまとめられたら、というのがこのアルバムを制作する前にまず考えたことでした。
目覚めの前、夢の中で聞こえてくるようなサウンドからスタートしたいと思い、曲、というよりはSound Effect のようなつもりで作ったのがこのAwakening(目覚め)です。

2.Going my way
そして、目覚まし時計の音と共に始まるこの曲は、ぼくが最も影響を受けた70年代のアメリカン・ポップスのテイストをストレートに表現できました。新しいアルバムはどういう方向で行くかと悩んでいた時にこの曲ができたことで、なにかが吹っ切れて、自分らしい音楽、まさに我が道を行くという思いで、曲作りを進めることができたように思います。日本の社会ではゴーイング・マイ・ウェイという姿勢は、どちらかというとマイナス・イメージですが、自分の心の指さす方向をしっかりつかむ、という意味でとても大切なことではないでしょうか。そして、様々な価値観が交錯する現代において、答えをどこか外にではなく、自分の内側=心の中、に求めることこそ、ひとつの回答になるとぼくは思っています。

3."I love you" song
非常に自然にできた、ぼくにとっては無理のない曲で、作った時からシングルはこれしかない、と思っていました。歌詞も自然に、普通に生きる普通の恋人たちの気持ちが表現できたように思います。山本公樹の6回ダビングしたサックス・ソロが爽快に曲を盛り上げてくれています。曲の後半に東京、九段会館でアルバムレコーディング直前に行われたライブで、「恋なんてない!」とお客さんに叫んでもらい、収録した声をダビングしてみました。

4.黄金の日々
"Going my way" と並んでアルバムの核となる曲だと思います。さまざま社会の変化の中でぼくらが救いや慰めを求めるもの、それはたぶん物質的なことではなく、もっと内面的な、輝ける記憶の中にあるのではないでしょうか。ぼくの音楽が、詞、曲、アレンジ、演奏、そして歌、というすべてが一丸となって表現しえる世界観である、ということが、今回のアルバムの中で一番明快な曲かも知れません。

5.R.E.A.L.
毎回アルバムを作るときに、esq レコーディング・メンバーがぼくの期待以上に素晴らしいプレイを聴かせてくれる曲が必ず現れるのですが、"Tailor-made"ではこの曲でした。夏秋冬春の切れ味鋭いハイハット、BARA のソウルフルなベース・プレイ、そして飯塚昌明の素晴らしいギター・ソロが聞き物。特にエンディングにかけての長いソロは、テイク・ワン(初めて弾いたときの演奏)があまりに素晴らしく、当初のフェイド・アウトの予定を変更、そのままエンディングまでソロを聴いてもらう事にしました。

6.Perfect timing
山本公樹のニュー・グループのリズム・セクションでもある、山下政人、池田達也のお二人に参加してもらい、シックな4ビートのバラードができ上がりました。ぼくが考えていた以上にチャーミングな曲に仕上がり、とても満足しています。そして多分、聴いてくださる皆さんにも気に入っていただけるのではないでしょうか。

7.Butterfly
esq としては初めての、ギターのバッキング主体によるバラード。キーボードの一切入らないアレンジというのはスターダスト・レビュー時代から考えても初めてかもしれません。山口ともの繊細で優しいパーカッション、山本公樹の美しくリリカルなソプラノ・サックスも魅力を高めてくれています。

8.微睡み -Dream land-
こういう、夢の中の世界をテーマにした曲もぼくとしては珍しいかも知れません。さまよい、漂うようなメロディとコード進行が自分でも気に入っています。

9.Georgy Girl (A Cappella)
毎回アルバムで1曲、アカペラでさまざまなポップスの名曲をカバーしているのですが、今回は'99年に車のCM ソングとして使われた、The Seekers のこの1963年のヒット曲です。軽やかな口笛の音がテレビから流れる度になんとも懐かしく、そしてとってもハッピーな気持ちになったので、次はこの曲をカバーしようと決めていました。間奏で聴かれるのは、Optigan という、レコード盤を再生して音を出す、不思議な電気楽器の音です。

10.Cry
アルバムにより現代的で、複雑なテイストを加えたいと思い、最後につくったのがこの曲。山口ともの不思議な音の手作りパーカッションがイントロで聞こえ、飯塚昌明と山本公樹による素晴らしいオブリガード、そして後半の夏秋冬春のタムを主体とした力強いドラミングが曲の世界を高めてくれています。

11.流星物語
目覚めで始まったこのアルバムを、気持ちよく眠りに誘うにはどんな曲がいいかと考え、スターダスト・レビュー時代のこのナンバーを取り上げ、セルフ・カバーしました。既に'96年の"ジャンボリー"ツアーでファンの皆さんにはご披露済みのアレンジですが、より完成度を高め、原曲の持つピーターパンのようなファンタジックな世界観をより明快に表現できたように思います。曲の最後に夜空へと旅立ち、そしてまたオープニングの目覚めへと続くのです。

これまでも自宅録音(Drums の夏秋くんの自宅スタジオ)ではあったのですが、今回のアルバムからは、晴れてぼく自身の自宅にあるスタジオでの初録音となり、朝起きてから夜寝るまでまさに、録音漬けの毎日で制作しました。また、制作時よりファンの皆さんのサポートを受け、様々な意味で手作りの良さ、そしてアルバムを手渡しできる喜びを味わいながら作った、まさに"Tailor-made" と呼ぶにふさわしい作品です。ぜひ皆さんに気に入っていただけたらと思います。

Episode Vol.2 & Vol.3 全曲解説   [戻る]

 ぼくらの時代のスタンダード・ナンバーたち
 一日の終わり ベッドサイドに 好きな飲みものと、Episode を…

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 通常のオリジナルアルバムがいわば、連続性のある各章から成り立っている小説だとしたら、今回のアルバムは短編を中心に編まれた、いわば間にはさまれる挿話(エピソード)のような作品集です。

 今回は500人ほどのキャパシティのホール(埼玉、エローラホール)のステージ・センターにピアノをおき、3日間、自分でテープレコーダーのRec ボタンを押しながら、たった一人で弾き語りのレコーディングを行いました。歌もアコースティック・ピアノもいっぺんに録音してしまう、いってみれば"お客さんのいないライブ・レコーディング"。
 ふだんのアルバム作りが、作詞作曲、アレンジという長い構想の時間を経て、一つ一つの演奏や歌を積み上げるようにつくっていく、いわば時差のある中で完成度を高めていくレコーディングだとしたら、今回は一発録りという同時性の中で、歌うこと、演奏すること、そのものの肉体性とその成果を確かめてみたい、という思いがありました。
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 というのが前回のEpisode Vol.1発売時のコメントでした。
 続編である今回も基本的な考えは全く一緒で、前回と違うのはホールでのレコーディングが倍の6日間になったことと、150曲以上になるカバーの全レパートリーの数でした。これだけ多種多様なレパートリーから、たった1枚分のアルバムの選曲をするのは大変困難に思えたため、2枚同時に制作することにしました。
 2枚同時に制作するのであれば、それぞれにテーマを決めよう、ということで、Vol.2 は春から夏、だんだん暖かくなり、暑い季節にいたるまでフィットする曲を集め、Vol.3 は秋から冬、涼しくなりそして寒い季節を彩る曲を集めました。

 選曲してみると全体を通して、ぼくが育ってきた時代、影響を受けてきたアーティスト、楽曲がバランスよくならび、今までの一般的な認識とはまたひと味違う、ぼくなりの「スタンダード・ナンバー」が揃ったように思います。でもそれは決して独りよがりで自己満足的な内容ではなく、同世代の洋楽を中心に聴いてきた人には納得していただけるものとなりましたし、初めて聴くという人たちにも十分楽しんでいただける、時代を超えて生き延びるだけの情熱と美しさを備えた、素晴らしい曲たちが集まったと思っています。

 また、バンド・アレンジが主体のアルバムと、弾き語りを中心としたライブ、こうしたesq のアルバムとライブの音的なギャップを埋める、という意味でもVol.1 よりもさらに意味のある作品になったように思います。ライブの空気感をそのままアルバムにしたような、今回のEpisodeシリーズは、どんな世代の方にも聴いてもらえる、自信作です。

Episode Vol.2

瞳の中の天国
'91年のStardust Revueのアルバム「Brightest!」より。
軽やかなミドル・テンポのこの曲は、実は元々バラードとして思いつきました。いってみればこちらが、よりオリジナルに近いバージョンです。

■今回の2枚のアルバムを選曲する際に、春夏編をスタートする曲として真っ先に思い浮かんだのがこの曲。曲と詞のバランスがとても自然で、自分でも気に入っている曲のひとつ。ライブではこのアレンジで何度も歌っていたのだが、こうしてオリジナルな形でアルバムに残せたのがうれしい。

Surf's Up
'71年のThe Beach Boysのアルバム、「Surf's Up」より。
何度聴いても、何度歌っても、この美しくマジカルな響きは色あせる事がありません。この永遠の名曲はきっと21世紀にも愛され続けるでしょう。

■「20世紀でもっとも美しい音楽」とレナード・バーンスタインが語ったと言われる伝説の曲。作為やテクニックではとても思いつかないであろうコード進行や、複雑だがきわめて自然に聞こえる曲の構成が本当に素晴らしく、まさに天才が生みだした作品だと思う。幻想的な歌詞の世界観がさらに曲の深度を深めている。「Episode Vol.1」の時にも録音したのだが、歌にどうしても納得がいかず、今回のセッションではまずこの曲を完成させることが最初の課題だった。

月影のスローダンス
Percussion:山口とも&三谷泰弘
'87年のStardust Revue のアルバム、「Night Songs」より。
MGM ミュージカル映画の最高傑作「Band Wagon」。その中でも最も優美なナンバー"Dancing In The Dark"を思い浮かべながら書いた曲です。

■10代から20代後半ぐらいまで、'50〜'60年代のハリウッド・ミュージカル映画に熱中していた。そうしたぼくの趣味は当時のスターダスト・レビューのアカペラの選曲にも表れていたのだが、なんとかオリジナルでもミュージカル的なテイストを生かした曲を書きたい、といつも思っていた。山口ともさんと二人、スプーンとカスタネットで「チャ、チャ」とやっている音がとても気持ちよく、レコーディングには妙な楽しさがあった。

プールサイド
'78年の南佳孝のアルバム「South Of The Border」より。
水面に反射する、眩しくて鮮やかな夏の陽射し。そして幻のような恋の情景。歌詞とメロディの幸せな融合。そんなこの曲がとても好きです。

■「South Of The Border」は詞、曲、アレンジ、演奏、歌唱、トータルのプロデュース・ワークと、すべてが高いレベルで融合された名盤だと思う。そのアルバムがリリースされた頃、ぼく自身がちょうど日本語で曲を作り始めた時期であり、詞が思うように書けず、ずっと悩みの種だった。この時期の来生えつこさんの詞は情緒があるのに乾いていて、本当に素晴らしく、独特な言葉の選び方などに大きく影響を受けた。こんなに美しい幻を、いつまでも見続けていたいものだと思う

Genevieve
Electric Guitar:佐橋佳幸
'78年のAndrew Goldのアルバム、「All This And Heaven Too」より。原曲を聴いた人はきっと、歌と演奏がそっくりなのでびっくりすることでしょう。こういう曲が1曲入っててもよいのです、たぶん。

■日本で正当な評価がないアンドリュー・ゴールドだが、'70年代の彼の作品は本当に大好きだった。達郎バンドで知り合った佐橋さんもアンドリュー・マニアで、すっかり意気投合、ぜひ彼にギターを弾いてもらおうと思いついた。細かいピアノのフレーズや、ギター・ソロもあえてオリジナルそっくりに演奏しているのも、ファン気質の表れと理解していただきたい。

Disney Girls
'77年のBruce Johnstonのアルバム「Going Public」より。
大学受験を控えて、うっ屈していた夏、毎日1度は聴いていたアルバムです。そしてぼくにとってコーラス・アレンジの面で、もっとも影響を受けたアーティストでもあります。

■カバー曲のうち、ソロになってからレパートリーにした曲もあれば、アマチュア時代からずっと歌い続けている曲もある。この曲は後者の典型。自宅のピアノで何度歌ったかわからないぐらい。コーラスアレンジもまさに、ブルース・ジョンストン的。数多くのカバー・バージョンがある曲だが、たぶん「Going Public」の中のバージョンにもっとも似ているのでは、と自慢してしまうのも、これまたファン気質であります。

Burn Down The Mission
Organ:佐々木久美
Percussion & Snair Drum:山口とも
'70年のElton Johnのアルバム「Tumbleweed Conneciton」より。
この人のようになろう!、と思った14歳の頃。曲も歌もピアノも、そして作詞のバーニー・トーピンとのコンビネーションも、とにかく全てがぼくにとって Superな存在でした。

■エルトン・ジョンの曲もまさに昔からの弾き語りのレパートリーだったのだが、この曲は弾き語りタイプの曲ではないのでこれまで歌ったことはなかった。佐々木久美さんと共にライブをやったときに初めて選曲、良い感じではまったので、ライブでの定番曲になった。その久美さんのオルガンに加え、山口ともさんのパーカッション、そして一人で多重録音したクワイヤー(教会の合唱隊)風のコーラス(&手拍子24回分!)で、後半はひたすら盛り上がっていく。もちろんこれも最初はたった一人での録音だが、一番最初に歌った、荒さが残るが熱いテイクを何度やっても越えられず、結局Take 1を採用することに。

抱きしめよう
Soprano Sax:山本公樹
'96年のesqのアルバム「ジャンボリー」より。
曲を書いた時点での自分の表現能力を超えてしまう曲ができてしまうことが、たまにあるものです。ライブで歌い続ける事によって、新たな力をもった曲になりました。

■ライブでは最初からずっと、アルバムでのアレンジと違う、このスタイルで演奏し続けている。サックスの山本公樹さんとのコンビネーションもほとんどあうんの呼吸で、自分たちでも別々に録音したとは思えないほど、ぴったりはまっている。
ただ、歌そのもので一番苦労したのもこの曲。自分で作ったんだから文句は言えないのだが、何度歌っても難しい。

地球は狭くなりました
'73年のオフコースのアルバム「僕の贈りもの」より。
ウェットであか抜けない当時の日本の音楽のなかで、オフコースの作る斬新なコード・プログレッションと、ファルセットを多用したハーモニーはひときわ輝いていました。

■中学の時、自分のラジオを手に入れて自分で音楽を選んで聴き始め、最初にファンになったのがオフコース。女子大生ばかりの客席に混じり、照れくさい気持ちで、まだオフコースが2人の時代の、デビュー・コンサートを見に行った中学生時代が懐かしい。発売日に手に入れたデビュー・アルバムの中に入っていたこの曲は、歌詞の世界観もとっても'70年代的で、あの時代がよみがえり、甘酸っぱい気持ちになってしまう。

We've Only Just Begun
'70年のCarpentersのアルバム、「Close To You」より。
'70年代のロックに燃えていた中学生にとって、カーペンターズのサウンドはあまりにスィートで、その真価に気がついたのは実は、音楽を仕事にしてからでした。

■カーペンターズの最盛期だった'70年代前半、いやでも耳に入ってくるカレンの歌はあまりにクリーンすぎて、どうも好きになれなかった。今になって聴いてみるとボーカルとしての完成度は本当にすごい。この曲を選んだのは、一番彼ららしい曲だと思ったのと、リチャードの、まるでエアコンの風のような、人工的に涼しい感じの一人多重コーラスを再現したかったから。

夏の女王 (Dedicated to Esther Williams)
飯塚昌明:Electric Guitar
山口とも:Percussion
'89年のStardust Revueのアルバム、「In The Sun, In The Shade」より。
MGMミュージカル映画のアンソロジー、「That's Entertainment」によって初めて知ったエスター・ウィリアムスの主演映画。その、無意味なほどゴージャスであでやかで、しかも儚い魅力を歌にしたいと思って書いた曲です。

■スタレビ時代に作品として残した中で、レコーディングして、アルバムに残っている最終的な完成形に心残りがある曲が何曲かあって、この曲もそのうちの一つ。きっといつか、ちゃんとやり直したいと思い続けていた。飯塚昌明さんの美しいオブリガートと、山口ともさんのおしゃれなパーカッションのおかげもあって、すっかり満足できる出来となった。

Will You Love Me Tomorrow
佐々木久美:Organ & Harmony Vocal
'71年のCarole Kingのアルバム「Tapestry」より。
'70年代初頭のシンガー=ソング・ライター・ムーブメントを代表する「Tapestry」は、全曲が名曲ぞろいという奇跡のようなアルバムです。そのスピリットを最も表しているのがこの曲かも知れません。

■女性の歌であるこの名曲を取り上げるにあたり、女性の声が欲しいと思っていた。ライブで佐々木久美さんに一緒に歌ってもらった良さを再現できたらと思い、お願いしたが、予想以上の出来になりとてもうれしい。オルガンとボーカルがまったく同一線上にある、久美さんのソウルフルなミュージシャン・シップが感じられると思う。

Summer Soft
Organ:佐々木久美
'76年のStevie Wonderのアルバム「Songs In The Key Of Life」より。
軽やかでただようようにはじまり、どこまでも舞い上がって、空の向こうまで飛んでいけそうなメロディ。ぼくにとってのスティービーは、こういう曲なのです。

■'70年代、まさに魔法のように傑作を生む続けたスティービー・ワンダー。その最高傑作といわれるアルバムからの選曲。これがうまく録音できたときは本当にほっとした。それぐらい、コードも歌も難しい曲。

Episode Vol.3

One More Time
Nylon Guitar:佐橋佳幸
'87年のStardust Revueのアルバム「Night Songs」より。
原曲がもともと持っている優しさを、よりストレートに表現したアレンジになりました。

■秋冬編の1曲目はかなり迷って、あれこれスタレビ時代の曲を歌ってみたのだが、一番フィットしたのがこの曲だった。佐橋さんの提案によるガット・ギターが実に暖かく、この曲の世界を拡げてくれたと思う。地味ながら自分で演奏したシェーカーもいい感じ。苦労しましたが。

Losing Myself In You
Acoustic Guitars:佐橋佳幸
'78年、Stephen Bishopのアルバム「Bish」より。
ぼくにとって、ロマンティックな時期を共に過した大事なアルバムで、大切な思い出が一杯つまっています。

■スティーブン・ビショップも大好きなシンガー=ソング・ライターのひとり。それに彼の歌のキーはちょうどぼくの歌のレンジとぴったりで、歌っていても本当に気持ちがいい。長年待ち続けた初めての来日ライブで、この曲を歌われたときには涙が止まらず、恥ずかしかった。それぐらい思い出の深いアルバム。佐橋さんのアコースティック・ギターと共に、マイケル・マクドナルドのコーラスを模した我が一人多重コーラスにもご注目。

It's Only A Paper Moon
小林太:Mute Trumpet
山口とも:Percussion
Nat King Coleをはじめ、多くのシンガーが歌っている、古くからのスタンダード・ナンバーです。ぼくらの世代では、ライアン&テータム・オニール親子が主演した、同名映画のイメージが強い曲です。

■スタレビ時代にスタンダード・ナンバーを数多くカバーしたが、この曲もその頃からのレパートリーのひとつ。公樹さんの紹介で小林太さんに、ご機嫌なミュート・トランペット・ソロを吹いてもらい、ともさんに特製の廃品で出来たドラムをたたいてもらった。エンディングでともさんがスティックを落として、スタジオの床に転がるところが、何度聴いても笑ってしまう。天性のパフォーマーとは彼のような人のことを言うのだと思う。

旅立つ秋
'74年の荒井由実のアルバム、「Misslim」より。
青春という時期の、ひたむきさ、愚かさ、はずかしさなど様々な面の中で、「青春の美しさ」を描かせたら、この時期のユーミンにかなう人はいない、というのがぼくの持論です。

■リアルタイムでは、ほとんどヒット曲しか知らなかった初期のユーミンだが、評価の高いセカンド・アルバムを聴いたのはごく最近。その中で一番好きになったのがこの曲だった。ほれぼれするほど、いい曲だと歌う度に思う。メロディと詞のはまり方が絶妙で、詞と曲を同じ人が書いていないと存在し得ない曲だし、歌い手にとっては表現のしがいのある曲。淋しげなシンセサイザーの音も、とても気に入っている。

Love Space
Alto Sax:土岐英史
'77年、山下達郎のアルバム「Spacy」より。
音楽家に「発明した人」と「その発明を発展、進化させた人」がいるとしたら、達郎さんは日本の音楽界で、非常に数少ない「発明した人」だと思います。ぼくがその発明を最初に知ったのがこのアルバム。

■「Episode Vol.1」でカバーした「きぬずれ」は、アマチュア時代から歌っていたレパートリーだったが、この曲はソロになってから、ライブで試しに歌ったのが初めて。非常に評判が良く、今回収録することになったのだが、ソロをどうしようかと思い、下手に小細工するよりもどうせなら達郎バンドでご一緒させてもらっている土岐英史さんにサックスを吹いてもらおう、とお願いした。
アマチュアの頃あこがれていた人たちと一緒に音楽をやれて、好きな曲をカバーして、レコーディングできる。自分はつくづく幸せな人間だと思う、今回のレコーディングだった。

Don't Go Breaking My Heart
斬新でスタイリッシュな曲作りで、多くのアーティストに影響を与えた名作曲家、バート・バカラックのナンバー。ぼくは'67年のRoger Nichols & The Small Circle Of Friendsのアルバムで知りました。

■ソフト・ロックという日本で独特のポジションを得たジャンルの、一緒の代表作である「Roger Nichols & The Small Circle Of Friends」。なかでも不思議な存在感を持つこの曲を、オリジナルのニュアンスをそのままにカバーしてみた。細かいパーカッションも自分でやってみると、より愛着が増すものだ。

週末の天使
Alto Sax:山本公樹
'95年のesqのアルバム「自由の人」より。
音楽を目指した14歳の頃からずっと夢見てきたソロ・アルバムが、思っていた通りの形で作れた事は、最大の喜びでした。その1stアルバムに収められた、記念すべきデビュー・シングルがこの曲です。

■バンド時代に書き、とても気に入っていたこの曲が当時、発表できなかったことは、ぼくにとってかなり大きな精神的痛手だった。時が流れ、ソロとしてのデビュー・シングルとしてこの曲が世に出たことは、本当にうれしかったし、結果としてこれで良かったと思っている。ライブでこの曲を何度も一緒に演奏してくれている山本公樹さんが、今回のために新たなアプローチでソロを吹いてくれた。イントロの雑踏の音は、「雨の中のオレンジ」でも使わせてもらった、夏秋くん録音のSE。

Sister Moon
Soprano Sax:山本公樹
'87年のStingのアルバム「Nothing Like The Sun」より。時代を越えて生きのびるメロディが生まれにくい現代において、コンスタントに良い作品を生み出し続けるスティング。その中で、ぼくが最も好きな作品です。

■ぼくにとって、'80年代に大きな影響を受けた数少ないアーティストであるスティング。同じく当時、スティング・バンドのサックス・プレイヤー、ブランフォード・マルサリスに大きな影響を受けた山本公樹さんと二人で、思い切ってトライしてみた結果がこの曲、といっていいかもしれない。いかがなものでしょう。

Let's Call It "Love" 〜 Feel Like Makin' Love
Alto Sax:山本公樹
'94年のStardust Revueのアルバム「楽団」より。
70年代の洋楽からの大きな影響がストレートに出たオリジナルと、ぼくが洋楽を浴びるように聴いていた時代、'74年のロバータ・フラックのヒット曲をメドレーにしてみました。

■この曲も人気が高く、ぼく自身も気に入っている曲なので、一人で作り直してみた。ライブの時にメドレーにしていた、大好きな「Feel Like Makin' Love」を、そのままつなげて。「甘いLove Song」を「甘いMarvin Gaye」に変えたおまけに、"Let's Get It On"をワンフレーズ。

Border Song
Organ:佐々木久美
'70年のElton Johnのアルバム「Elton John」より。
この時代のエルトン・ジョンは驚異的なペースで名作を生み出し続けていて、英米では正に天才の名をほしいままにしていました。しかし日本では当時から正しい評価がなされていない、というのが古くからのファンであるぼくの実感なのです。

■ゴスペル調のこの曲も、いったい自宅のピアノで何度歌っただろうか。一度こんな感じのコーラスと共に歌ってみたかった。そんな単純な夢を叶えたのが、このテイク。当時NHKで放送された「ヤング・ミュージック・ショー」で、オーケストラと一緒に演奏していた、若き日のエルトンの姿を思い浮かべながら。

Cliche
'76年のTodd Rundgrenのアルバム「Faithful」より。
ミュージシャンが好むミュージシャン、としてまず筆頭に挙げられるのがこの人。その不思議なコード進行と、美しく独自なメロディは、今だに大きな影響力をもっています。カバーされる事の多いトッドの曲の中から、あまり取り上げられる事の少ない隠れた名曲を選んでみました。

■エルトンと共に、音楽を始めた頃に最初に影響を受けたのがトッド・ラングレン。トッドの曲はたくさんカバーしているだが、その中でももっとも難しかったのがこの曲。独特のメロディと歌詞のはまり具合を何度も練習して、ようやく歌えるようになった。コーラスのアレンジも実に独特で、ほぼ原曲に忠実なものとなっている。

The Christmas Song
Alto Sax:土岐英史
Nat King Coleがヒットさせて有名になったスタンダード・ナンバー。ぼくが最も好きなジャズ・シンガー、メル・トーメが書いたチャーミングなクリスマス・ソングです。

■クリスマス・シーズンになると数多くのクリスマス・ソングが街に流れる。クリスチャンでなくても、どの曲も心が弾み、歌で季節を感じることの喜びを味わえるのは幸せなことだ。この曲はかなり正統派のスタイルで歌ってみた。土岐英史さんのサックスはこれがTake 1(初めて演奏したテイク)とは信じられないぐらい完成されていて、何度聴いてもぞくぞくしてしまう。ソロのバックでピアノを弾くぼくまで、なんだかものすごくうまく聞こえてしまうところが音楽の不思議である。

Sing A Song For You
'87年のStardust Revueのアルバム、「Night Songs」より。
人間にとって、生まれてから成人するまでの青年期を過ごした場所や、その環境がいかに重要であるか、年を経る毎に痛感するのですが、そんな生まれ育った街に対する愛情を歌った歌です。東京という巨大な都市の中のほんの一部分ですが、いくつかの小さな場所は、ぼくにとって大切なふるさとなのです。

■東京についてふれた歌には、外からの視点の歌が多く、中にはひどく無神経な歌があり、そんな歌を聴くと実に不快な気分になる。そんな曲に対する、ぼくなりのアンチ・テーゼがこの曲だといってもいい。ぼくが生まれ育った家は今は、跡形もなく消え去ってしまったので、思い出がより純度を増してしまったのかもしれないけれど、いつも子供時代の幸せな思い出を、気持ちを込めて歌っている。そのためか、自分で作った歌なのに、涙腺がゆるむことも多い、大好きな歌である。

In Motion 全曲解説     [戻る]

 esq の(オフィシャルな形では)初のライブ・アルバム&ビデオ「In Motion」はそもそも、ライブ・ビデオのみの企画だった。しかし実際にライブを収録してみると、これまでぼくが作ってきた音楽のベスト的な選曲、非常に充実したバンドの演奏、さらに自分自身の歌の完成度も高く、収録時間に限界のあるビデオのリリースだけでは惜しいと思いはじめ、全曲を収録したアルバムもリリースすることになった。
 「In Motion」というタイトルは、esq のライブ未体験の人にも動いている姿を見てもらえる、という意味で名付けたのだが、さらに"Emotion" と響きがとても似ているので、ライブ・アルバム&ビデオのタイトルとしてぴったりだと思っている。

 Disc-1
 1.2001 Overture〜週末の天使
 今回のライブのオープニング用に作ったS.E.からスタート、esq としてのソロデビュー曲「週末の天使」へ。ソロ・デビューしてから現在まで、この曲は数限りなく歌ったが、オリジナル・アレンジでの演奏はこれまで、バンドを率いての2回のツアーのみ。というのも、このアレンジの場合、飯塚昌明のギターソロの印象が強いため。やはり今回も良いソロを弾いてくれた。

 2.Ride on a bus
 esq 2nd アルバム「ジャンボリー」より。メドレーっぽくやっているので、オリジナルより短くなっている。曲の最初の部分、演奏にのってしゃべったMCが、短い時間に必要なことを伝えようとして言葉を選んだら、結果的に達郎さんのライブの、オープニングMCに酷似してしまった。別にまねしたつもりはないのですが。ライブの前半にぴったりの、大好きな曲。

 3.Evil eyes -悪意-
 esq 1st アルバム「自由の人」より。この曲にも密かにファンが多い。山本公樹のバリトン・サックスをフィーチャー。やはり短くアレンジしてある。
 日本にとって激動の一年だった'95年に書いた歌詞は、かなり世相に影響されたものだが、現在もなお、いや、より時代に即した内容になっているように思う。

 4.あいを しんじて
 esq 4th アルバム「One And Only」より。このライブではオープニングで楽しい雰囲気を十分に伝えたかったので、ノン・ストップで曲を構成している。前半のピークがこの曲。ビデオでの、山本公樹のおちゃめな振りにご注目。

 5.もっとそばに
 1st アルバム「自由の人」より。18年ほど前、最初にソロ・アルバムを考え始めた時期につくった作品。
 この曲の中盤の間奏部分は、esq レコーディングメンバーのカラーが重なり合った、「自由の人」の中で最も好きな瞬間。それをこうしてライブで演奏できるのはぼくにとって、非常に素晴らしいことなのだ。

 6.2 o'clock samba
 1st アルバム「自由の人」より。「もっとそばに」と同じ時期に書いた、思い出深い1曲。飯塚昌明のガット・ギター、夏秋文尚のパーカッションや、マレットを使ったドラムをフィーチャーした、シックなアレンジになった。山本公樹のサックス・ソロが美しい。

 7.砂の上のBlues
 4th アルバム「One And Only」より。The Four Freshmen で有名な「Speak Low」をイントロダクションにしたアレンジ。
 東京のライブでは一部キーボードを失敗し、アンコールで再演したのだが、やはり最初のバージョンの方が歌や演奏の出来が良く、若干手直しして収録した。夏秋文尚とBARA のリズム・セクションが非常に格好良い。

 8.逃亡 -Running out-
 2nd アルバム「ジャンボリー」より。これまでライブでは一度もやったことのなかった。というのも、このソリッドなリズム・セクションがないと、この曲の魅力が半減するからだ。

 9.R.E.A.L.
 6th アルバム「Tailor-made」より。この曲は「Tailor-made」の中でも非常にライブ感溢れる曲なので、早くこうしてバンド・スタイルでやりたかった。
 夏秋、BARA のスリリングなリズム・セクション、素晴らしい飯塚昌明のギター・ソロは何度聴いても熱くなる。

 10.Single Night
 スターダスト・レビューの「Super Donuts」より。'99年3月に行った、初のバンド・ツアーの時のライブ・レコーディング。山口ともの繊細な音のパーカッションが美しい。

 11.再会
 2nd アルバム「ジャンボリー」より。90年代前半のスタレビ時代に書き、アレンジした曲のメロディを書き直したもので、当時の非常に計算し尽くしたアレンジの名残が残っている。

 12.Triste
 スターダスト・レビューの「In The Sun, In The Shade」より。非常にファンの多い曲で、今回のライブでもアンコールで演奏したところ、とても盛り上がった。
 ライブ盤なのにフェイド・アウトしているのは、この曲の最後の部分で録音機材がトラブルを起こし、エンディングの前で録音が止まってしまったため。収録するかどうか迷ったが、フェイド・アウトでもやはり収録して良かったと思う。

 Disc-2
 1.流星物語
 6th アルバム「Tailor-made」より。元々はスタレビ時代の曲をリアレンジしたもの。後半の、ドラム&ベースが入ってきてからの怒濤のスピード感はアルバムより以上のものになっている。

 2.Going my way
 6th アルバム「Tailor-made」より。ビデオで見ると、この曲のエンディングでピアノを連打している自分が、なんだかおかしくて笑える。自分を他人の目で見てみると、こういう奴って好きだな、なんて思ってしまう。

 3.黄金の日々
 6th アルバム「Tailor-made」より。これまでのライブではアカペラ・アレンジでやったり、弾き語りでやってきた曲だが、このライブで初めてオリジナルのバンド・スタイルで演奏する事が出来た。ライブで何度も歌うことで、オリジナル・バージョンよりも歌の説得力がより増したように思う。

 4.Make love
 2nd アルバム「ジャンボリー」より。優しく歌うこと、静かに演奏を盛り上げる事の難しさをいつも感じる曲。山本公樹のフルート、飯塚昌明のガット・ギターが気持ちよいサウンドを形作っている。

 5.Supersonic
 スターダスト・レビューの「Thank You」より。'96年のジャンボリーツアーの中での1曲。'94年のスタレビ時代のツアーでやったアレンジが元になっている。 この頃はコンパクトな録音機材であちこちのライブを録音していたので、これは福岡でのライブ・バージョン。
 とにかく山本公樹と山口ともの絡みが最高で、以前から発表したいと思っていた。スカラ・エスパシオは非常に音が良いホールで、いつやっても上手く演奏することが出来る。

 6.飛翔 -Fly away-
 1st アルバム「自由の人」より。オリジナルに忠実な歌と演奏。美しい山本公樹のソプラノ・サックスと、夏秋文尚のディジュリドゥーをフィーチャー。

 7.夜間飛行
 スターダスト・レビューの「Thank You」より。'98年の"esq Satellite Tour"でのバージョン。この曲も多くのファンがいる曲で、もちろん自分でも大好きな曲。
 こうしてアレンジを変えても、ちゃんとその良さが十分伝えられるということが、曲の質の高さを表していると思う。

 8."I love you" song
 6th アルバム「Tailor-made」より。実際のライブでは「Going my way」の次に演奏しているのだが、照明の暗い中でデータの切り替えに失敗して、「Going my way」の頭の目覚ましの音が再度出てしまっている。失敗したその場の雰囲気が楽しいためそのまま収録した。

 9.Love goes on
 5th アルバム「Gems 〜'95 to '98〜」より。オリジナルはラテン+ハウスっぽい雰囲気だが、ライブではもっとストレートな感じになっている。
 ギターとサックスのソロのかけ合いが多いのもこのライブの特色で、とにかくメンバーの演奏をいい感じでフィーチャーしたかったのだ。

 10.Melody
 4th アルバム「One And Only」より。esq のライブ後半の定番曲になっている。ライブ本編の最後に持ってきたので、曲のエンディングはいつもと違って、派手に盛り上げて終わっている。

 11.One and only
 4th アルバム「One And Only」より。今まで数多くのバラードを書いてきたが、歌詞、曲と共に最も自分の中で誇りに思える歌。アンコールの最後に演奏したのだが、演奏にも力が入っていて、とても素晴らしいエンディングとなった。

 実は'97年に2枚組ライブ・アルバムをリリースする企画があり、選曲を考え、曲を並べデモ・バージョンまで作ってあったのだが、もろもろの事情で頓挫した。しかし、結果的に今回が初めてのライブのリリースになったことは、本当に良かったと思っている。
 曲目も演奏も充実し、なにより歌のクオリティ、説得力があの頃とは全く違う。ライブで歌うことを、自分が頭に思い描いた理想のレベルの近くまで、引き上げられたこと。そうした自分の成長が確かめられる意味でも、このライブアルバム&ビデオはぼくにとって宝物になるだろう。
 esq 三谷泰弘

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Koo:kan 全曲解説     [戻る]

 空間を彩る音 そして、空間のある音楽

 音楽を聴くという行為、その喜びのひとつに、今この瞬間の空気の色を変えられる事がある。どんな場所、どんな状況にいても、好きな音を聴くだけで、空気を変化させることができる。素晴らしい音楽は、空間の居心地を左右する不思議な力を持っている。

 そして、その音楽の中で心地よい空間を感じるためには、音楽そのものにも十分な空間がなければいけない。美しい一脚の椅子があった時、その美しさを感じることのできるだけの、十分なスペースが必要なように。美しいデザインを描く時、そのデザインを味わうことのできる、十分な余白が必要なように。
 今巷に溢れている音楽は、情報量が多く、みっちりと詰まり過ぎていて、余白、空間などという概念すら見えてこない。もっともっと余白の多い、空間の多いサウンドが必要なのだ。

 そんなふたつの「空間」という意味を込めて、「Koo:kan」はできあがりました。皆さんにとってこの作品が、心地よい空間を感じさせるものとなれば、とてもうれしく思います。

1.I think I love you

 アルバムのための作品づくりが順調に進んでいくと、自然とアルバム1曲目が決まってくる。この曲もできた瞬間に、今回のアルバムの1曲目にふさわしい曲はこれだ、という確信が生まれた。青山純、伊藤広規の実に独特なイントネーションを持つリズム・セクションがほんとうに心地よく、佐橋佳幸のアコースティック・ギターの流れるようなストローク、そしてエリック宮城の、ハイノート・ヒッターにも関わらず、優しく柔らかなフリューゲルホーンのソロがこの曲の心地よさをより高めてくれた。

2.こんな夜は

 きっと以前なら、こういう形でこの曲をアルバムの2曲目にしようとは思わなかっただろう。そして以前なら、アレンジとしてもう少し筆を進めるところだろうが、その一歩手前で筆を置けるようになったところが今回のアルバムの、自分なりの成長なのかな、と思う。何より土岐英史のサックスが素晴らしく、こういう形でフィーチャーできる事も、ぼくなりのこの数年の収穫だと思っている。

3.Timeless traveler

 毎日毎日様々な事件、出来事が起こる中で、北朝鮮拉致被害者の帰国、その一連の報道は衝撃的なニュースだった。ある日突然何の理由もなく、普通の人々が見も知らぬ世界に連れ去られ、未来を閉ざされてしまう。そして何十年ぶりに突然呼び戻され、帰国した祖国は、想像すらできないような世界に変わっていた。それはまるでSF、それも悪夢のようなタイムトラベルが、現実に起こったかのようだ。さらにぼくにとってこの事件がリアルだったのは、連れ去られた彼らが自分と同じロック世代だったということだ。
 夏秋文尚、BARAの重厚なリズム・セクションに加え、飯塚昌明の素晴らしいギター・ソロを味わって欲しい。特にエンディングにかけては本当に見事だと思う。

4.Struttin'

 イントロのシンセサイザーのフレーズを思いついたことで、この曲は始まった。まさに最新型のesq の世界を表現できたこの曲こそ、今回のシングルにふさわしいはずだ。ボーカルのスタイルとしても、自分の新しい表現を広げられたのではないかと思っている。
 音楽雑誌の付録CD に収録されていた、西脇辰弥のハーモニカを初めて聴き、心から驚き、面識がないのにも関わらずいきなりメールで参加をお願いした。快諾していただき、レコーディングしたそのソロは、ぼくが思い描いていたこの曲のソロの世界そのもので、素晴らしい出来となった。今回のアルバムにおける、一番うれしいハプニングだった。

5.この手をとって

 この辺でesq の定番の世界のラブソングを1曲。山口ともの軽やかなコンガ、飯塚昌明のセクシーなギターソロ、山本公樹のホットなアルトサックスが、この、ささやかな幸せを分かち合う歌にぴったりの暖かな世界を表現してくれている。

6.Rainbow

 アメリカとイギリスの中間地点に着地するようなサウンドを目指した。esq としては珍しいタイプの曲。佐橋佳幸のスライド・ギターをフィーチャーしたいと、この曲を作っている時から思い描いていた。12弦のリズム・ギターも含め、本当に素晴らしいギターを弾いてくれた彼に感謝しています。アコーディオンもつたないながら自分で弾いてみて、良い感じになった。

7.愛よ何処へ

 全編に流れる、不思議な浮遊感のあるシンセサイザーの音色がすべての始まりだった。esq のレギュラー・リズム・セクション(夏秋文尚、BARA)の独自性、ソリッドな良さが発揮されたナンバー。この曲もソロ・アーティストになってからの、定番となった世界観の曲だと思う。 コーラスも含め、こういう世界はぼくにしか表現できないと、自負しています。

8.Saturday In The Park (A Cappella)

 Chicago の'72年のヒット曲。ぼくが13歳になるこの年は、洋楽に本格的に出逢った年であり、この時代に聴いたアメリカのヒット曲はすべて、ぼくの音楽的土台となっている。その中でも大好きな1曲であり、2002年のesq's Piano Bar で取り上げ、その中でひょっとしたらアカペラにできるかもと思いついた。
 この曲を聴くたびに「自由」という言葉の本来の意味を強烈に感じ、この自由な気分が今の世界の至るところに存在したら、世界はどんなにHappy になれるんだろう、と思う。

9.Boy Meets Girl

 Stardust Revue、'84年「Thank You」収録曲のセルフ・カバー。スタレビ時代の曲を1曲セレクトする基準は、今の気分というのもあるし、そのアルバムに足りない色をその曲で補えればという部分も大きい。
 ストレートに歌の良さを伝えられ、ライブでのあの風通しのよい感じが欲しかったので、最小限の音で歌ってみた。こういうアレンジはテンポやニュアンス、タイミングが何より重要なので、歌とギターの一発録りでレコーディングを行ったが、さすがに佐橋佳幸のギターは素晴らしく、2度目のテイクでOKになる。
 
10.Always

 春に始まって、冬で終わる。意識したわけではないのだが、そんな流れも感じてもらえるような曲順になった。これもesq としては定番的な曲だと思う。
 夏秋文尚のタムが力強く、山本公樹の柔らかなソプラノサックス、そして山口ともの、曲のエンディングに向けてニュアンスが少しずつクレッシェンドしていく、繊細なパーカッションが素晴らしい。

 ソロとして10枚目、純粋なオリジナル・アルバムとしては2000年の「Tailor-made」以来3年ぶりになる今回のアルバム。思わぬ時間がかかってしまったが、この3年間は自分のソロだけではなく、様々な活動を並行して行いながら、音楽を聴く意味、音楽をつくる喜び、そうした根源的な事を考える事の多い、苦しくも実りの多い時期だった。

 どんなアーティストでも、キャリアを積んでいくうちに、これまでの作品を自分の中で超えるにはどうしたらいいか、悩み苦しむものだと思うのだが、ぼく自身も曲作りのスランプから脱するのがとても長くかかってしまった。
 とにかく自分がまず納得できる曲、感動できるものを作ることがこれほど難しいと思ったのは初めてで、そのせいでレコーディングも断続的にではあるが半年間もかかってしまった。しかしようやく自分として目指していたレベルまで達することができた新作がこうしてリリースできたことは、本当にうれしい。

 また今回のレコーディングをすべて、サンプリング周波数 24bit/96khz という、現在のCD フォーマットの倍以上の環境で行った事もとても大きな事だった。最終的なフォーマットがCD になるにしても、そのハイ・クオリティなサウンドは最終形の姿にも大きく影響したし、レコーディング時におけるモチベーションを高めるのにも大きな役に立った。

 皆さんにとって、この「Koo:kan」が、心地よい時間を過ごすための音楽になってくれたら、と願っています。
                                                                    esq 三谷泰弘


Struttin' 全曲解説    [戻る]

1.Struttin'

アルバムの同曲コメントを参照してください。

2.You're my girl

 アルバム用の曲作りで、最初の頃にできあがり、ずっとアルバムに入れようと思いレコーディングしていたのだが、他の収録曲が揃ってくるにつれてこの曲だけちょっと以前のesq のスタイルに思えてきて、アルバムからはずし、シングルのカップリングに収録した。

3.Marlene

 「Episode Vol.2」「Episode Vol.3」のレコーディング時にもたくさんのアウトテイクが生まれたが、今回収録したのはその中から2曲。まずはTodd Rundgren、"Something/Anything?" 収録曲のピアノ弾き語りでのカバー。
 いかにもトッドらしい摩訶不思議なコード進行に、とにかく愛らしい歌詞のコンビネーションがとても可愛らしく、昔から大好きな曲。エンディングに向けてどんどんコーラスの音程が高くなっていくところも、独特のユーモア感覚があり好きなので、同じような感じで再現してみた。

4.You And I

 「Episode Vol.2」「Episode Vol.3」のレコーディングのアウトテイクから。Stardust Revue、'85年「Voice」収録曲のセルフ・カバー。この曲は発表時点からファンが多く、スタレビ初期の三谷ボーカル曲の出発点になった感がある。
 オリジナルは曲やアレンジはともかく、現在の耳で聴くと歌が若いので(まぁ、それがいいという人もいると思いますが)、今のボーカルで残せたのは良かったと思っている。